未来を描き、自分の言葉で書き残す|ミッション・ステートメントから始まる歩み

未来を描く

未来のことを考えようとしたとき、「何を目指したいのか」「どこへ向かいたいのか」がはっきりせず、立ち止まってしまうことはないでしょうか。

情報にあふれた今の時代では、周囲の言葉や理想像に振り回され、自分自身の声がかき消されてしまうことも少なくありません。
そんなときこそ、自分だけの“軸”を静かに見つめ直すことが必要になります。

自己啓発の古典とされる『7つの習慣』の著者、スティーブン・R・コヴィー博士は、人生における意思決定を支えるものとしてミッション・ステートメントの重要性を説きました。
それは、単なる目標設定や計画のことではなく、自分が何を大切にし、どう在りたいのかを言葉にして明確にする行為です。

理想の未来を“描き”、そこに込めた想いを“書き残す”。
その過程にこそ、自分らしい歩みを始めるための手がかりが見えてくるはずです。

今すぐに明確な答えを出す必要はありません。
けれど、“自分にとっての納得できる選択”を積み重ねていくためには、立ち止まり、自分に問い直す時間がきっと力になります。

では、どうやってその“言葉”を見つけていけばよいのか。
ここからは、ミッション・ステートメントを形にするためのいくつかの視点を見ていきます。

なぜ“描く”ことから始めるのか

何か新しいことに踏み出そうとしたとき、明確な目標が見えていなくても、自分なりの未来を“描いてみる”ことは、その一歩を支える土台になります。
ここでは、なぜ未来を描くことが大切なのか、そしてどんなふうに向き合えばいいのかを整理していきます。

想像しない未来には進めない

何かを始めようとしたとき、「まず何から始めるべきか」と手段に意識が向くのは自然なことです。
けれどその前に必要なのは、「自分はどこへ向かいたいのか」という問いです。

これは、地図を持たずに旅に出るようなものです。たしかに、どこかには辿り着くかもしれない。
でも、行きたい場所が曖昧なままだと、進んでいる途中で「本当にこの道でよかったのか」と不安になり、立ち止まってしまうこともあるはずです。

未来を“描く”という行為は、白紙の地図に仮の目的地を置いてみるようなもの。
その目的地は途中で変わってもかまいません。描いてみて初めて、「やっぱりこっちかもしれない」と気づくこともある。だからこそ、最初の段階で大きな一歩を決める必要はありません。

大切なのは、今の自分が「どんな日々を送りたいのか」「何に時間を使いたいのか」といった感覚に目を向けてみること。
その問いから立ち上がってくるイメージが、少しずつ進む方向を示してくれるはずです。

曖昧なまま進む不安を避けるために

未来のことを考えようとしても、「どうせその通りにはいかない」と感じてしまうことがあります。
状況も気持ちも変わるのだから、今描いたところで意味があるのか──そんなふうに迷ってしまうのも自然なことです。

実際、かつて思い描いた未来が、今とはまったく違うものだったという経験を持つ人も多いはずです。
だからこそ、「どうせ変わる」と割り切ってしまいたくなる気持ちにも、どこかでうなずいてしまいます。

けれど、何も描かないままで進むと、いざ立ち止まったとき、どこへ向かっていたかったのかがわからなくなることがあります。はっきりとした目標でなくても、「今の自分はこう感じている」という言葉が残っていれば、そこへ一度立ち戻ることができます。

未来を描くことは、将来を決めることではなく、今の自分の輪郭を見つけておくこと。
たとえその言葉があとで変わっても、それまでに重ねてきた気持ちや選択は、すべてその人の歩みとして残っていきます。

自分の価値観と“にじませて”描く

未来を描こうとすると、つい「ちゃんとした理想像」を探してしまうことがあります。
たとえば、SNSで目にするような「独立して年収1000万」や「自分らしい仕事をしている人」の姿が思い浮かび、自分もそうあるべきだと感じてしまう。

でも、未来を描くというのは、そうした完成されたイメージを真似ることではありません。
むしろ、「自分がどう在りたいか」という感覚を、少しずつ言葉にしていく行為です。

たとえば、
「毎日、家族とちゃんとご飯を食べたい」
「好きなものに時間を使える余裕がほしい」
「信頼される人間関係の中で仕事をしたい」
——そんな思いも、立派な価値観です。

肩書きや収入ではなく、何を心地よいと感じ、どんなふうに過ごしていたいか。それを大切にしてみるだけでも、未来の描き方は変わってきます。

完璧な答えを見つけようとしなくても、言葉にしてみることで、ぼんやりしていた思いが少しずつ輪郭を持ち始めます。まずは自分の「こうだったらいいな」と思える瞬間を拾ってみてください。


自分にとっての「こうありたい」を見つけても、それを頭の中だけに留めておくと、日々の忙しさの中で輪郭がぼやけてしまうことがあります。
だからこそ、その思いを一度、自分の言葉で書き残してみる。
その小さな行為が、未来に向けた意思を少しずつかたちにしていく一歩になります。

“書き残す”ことで意味が生まれる

なんとなく思い描いていたことも、書き出してみると、不思議とその意味がはっきりしてくる。
それが、言葉にする力です。

頭の中で「こうなれたらいいな」と考えているだけのときは、その思いが本当の願いなのか、単なる理想なのか、自分でもよくわからないことがあります。
でも、一度それを言葉にし、目に見える形にすることで、その“曖昧さ”が少しずつ整理されていきます。

たとえば、「週に1日は家族とゆっくり夕飯を食べたい」と書いたとします。
それはただの予定ではなく、「何を大切にしたいか」という自分の軸を映し出す言葉になります。
忙しい日々の中で、その一文が自分にとっての“原点”のように立ち返れる存在になっていくのです。

もちろん、最初からうまく書けなくてもかまいません。
箇条書きでも、短いフレーズでも、思いついたことを少しずつ並べていくだけで十分です。
むしろ、形式にこだわらないことが、自分らしい言葉を引き出す助けになることもあります。

「これは人に見せられるものじゃないな」と思えるくらいでちょうどいい。
誰かの期待に応えるためではなく、自分が自分に向けて書くことが、いちばん力を持ちます。

言葉にして残しておくと、迷ったときにそこへ戻ることができます。
選択に悩んだとき、自分が何を大切にしていたのかを思い出させてくれる——
そんな“手がかり”として働いてくれるのです。

言葉が、選択の軸になる

書き残した言葉は、時間が経つほどに「自分らしさの基準」として育っていきます。

日々の暮らしの中では、仕事や家庭、人間関係など、さまざまな選択の場面が訪れます。
どれも正解があるわけではなく、ときには何を優先すべきか迷うこともあるでしょう。
そんなとき、自分で書いた言葉が、ふと頭をよぎることがあります。

たとえば、「人の話をきちんと聞ける人でありたい」と書いていたとしたら、
誰かとの対話に集中できなかった日の帰り道に、思い出すかもしれません。
それは自分を責めるためではなく、大事にしたい価値観を思い出す手がかりとして働きます。

言葉は、過去の自分が今の自分に残した“手紙”のようなもの。
一貫した選択を支え、納得のいく決断を後押ししてくれます。

書いた直後はピンとこなかった言葉も、数カ月後に読み返したときに
「これはやっぱり、自分にとって大切な感覚だった」と気づくこともあります。
そうやって、何度も立ち返る中で、言葉がだんだんと“軸”になっていくのです。

言葉が、これからの行動を照らす

書き出した言葉は、未来の自分にとっての「小さな灯り」になります。
それはすぐに何かを変えてくれるものではないかもしれません。
けれど、ふと立ち止まったとき、あるいは迷いの中にいるとき、心のどこかでそっと光る存在になります。

たとえば、仕事で新しい挑戦を前にしたとき。
「変化を恐れず、柔らかく対応できる人でありたい」と書いた一文が、
その決断を後押しすることがあります。誰かの言葉でも、目標でもない、自分がかつて大切にしたいと願った想いが、選択を支える軸として顔を出すのです。

行動は、価値観と結びついたときに強くなります。
逆に、どれだけ頑張っても、その行動が自分の言葉とかみ合っていなければ、どこかで疲れてしまう。
だからこそ、言葉があるということは、「なぜその行動をするのか」が常に手元にあるということでもあります。

大事なのは、すべてを言葉通りに生きようとすることではありません。
ときにはずれたり、忘れたりすることもある。けれど、戻ってこれる場所がある。
そのことが、日々の決断に余白と安心感をもたらしてくれるのです。

自分の言葉が、未来への指針になる

何気なく心に浮かんだ想いも、言葉として書き出すことで形を持ちます。
そしてその言葉は、時を経て自分の選択を支え、行動に静かに寄り添う存在になっていきます。

誰かに見せるためではなく、自分自身が立ち返るために書き残す。
その営みは、どこへ向かうか迷ったときに、自分なりの方向を示してくれます。大きな目標や派手なビジョンがなくても、日々の選択を整えるための手がかりがあれば、人は少しずつ前に進めるのかもしれません。

もし今、言葉にしたい何かがあるなら。
たとえそれが断片的であっても、きっと意味があるはずです。今日書いたその一文が、数カ月後の自分を支えるかもしれません。

自分にとっての“確かな軸”を、少しずつ育てていく——
そんな時間を持ってみることは、これからの歩みにとって、大切な土台になるのではないでしょうか。

著者プロフィール

シミズヒサノリ|Trigger Log運営メンバー
広告会社でマネジメント業務に従事している40代。
30代前半のころから副業を始め、ブログ運用、広告運用、業務委託など複数の副業を経験。
現在の副業歴は約10年。
Web制作会社での勤務経験もあり、UX(ユーザー体験)を意識した情報設計・コンテンツ発信に取り組んでいる。

自分の経験が、誰かの「最初の一歩」の後押しになればうれしいです。