「転職したいわけじゃない。
でも、このままでいいのかとも思う。」
今の職場に強い不満があるわけではない。
人間関係も悪くないし、給与も今すぐ困るほどではない。
けれど、ふと立ち止まったときに、
「この働き方をあと10年続けるのか?」と考えてしまう——。
そんな揺れを感じたとき、
無理に結論を出そうとするのではなく、
いったん“自分の視点”を整理してみることが大切です。
感情に流されず、自分にとって納得できる選択を見つけるために。
この記事では、転職・現職どちらに進むにしても役立つ、
判断の軸となる3つの視点をご紹介します。
転職すべきか迷ったときに、よくある3つの状態
転職を考えるきっかけは、人によってさまざまです。
ただ、「今すぐ転職したい」という確信に至る前に、多くの人が一度は似たような迷いを経験しています。
ここでは、よく見られる3つの状態を整理しながら、「迷いの正体」を見つめていきます。
やる気が出ないまま、毎日が過ぎていく
仕事に身が入らない。やる気が出ない。
とくに大きな不満があるわけではないけれど、「なんとなく気持ちが動かない」日が続いている。
そんな状態のまま、日々のタスクを淡々とこなしていると、
「これって、自分がこの仕事に向いてないってことなんだろうか?」
そんな考えがふと頭をよぎります。
仕事のやりがいや楽しさは、毎日感じられるものとは限りません。
ただ、その感覚が長く続くと、
「このままでいいのかな?」という疑問が、少しずつ大きくなっていきます。
転職するほどじゃないけれど、満足はしていない
業務に真剣に向き合っているのに、それに見合った評価や報酬が得られていない。
もっと裁量を持ちたい。新しいチャレンジもしたい。
そんな思いを抱きながらも、いまの仕事を手放す決断には至らない。
「今より悪くなるのは困る」
「環境は悪くないし、我慢できる範囲かもしれない」
「変化を望むのは、ぜいたくなんじゃないか」
そうやって、納得しようとする自分がいる。
一方で、「このままでいいのか?」という問いは、心の奥にずっと残っている。
このような状態では、気持ちが前にも後ろにも進みづらくなることがあります。
現状の維持は、選択肢のひとつとして決して悪いものではありません。
ただ、「納得して今を続けているのか」「あきらめて留まっているのか」——
その違いは、これからの働き方にじわじわと影響していきます。
転職したい気持ちはあるけれど、動けない理由がある
今の仕事から離れたい。別の環境でやり直したい。
そう思っていても、すぐに行動に移せるとは限りません。
家族、住宅ローン、職場での立場、収入の不安……
いま抱えている状況を考えると、どうしても踏み切れない。
「もっと準備が整ってから」
「タイミングを見て、いずれ」
そう言い聞かせて先送りにしているうちに、時間だけが過ぎていく。
もちろん、慎重に考えることは悪いことではありません。
ただ、「行動できない自分」を責めたり、
変われないことを“覚悟”と混同してしまうと、判断を鈍らせてしまうことがあります。
立ち止まりたくなる理由は、人によって異なります。ただ共通して言えるのは、「何を基準に判断すればいいのか」が見えなくなっている状態では、行動に移すのが難しくなるということです。
ここからは、自分の意志や選択を見つめ直すための整理法として、「Will・Can・Must」の3つの視点を取り上げていきます。
Will・Can・Mustの3視点で立ち位置を整理する
転職を考え始めたとき、気づけば転職サイトを眺めていたり、友人や同僚のキャリアと比べて焦りを感じてしまったりすることがあります。
けれど、本当に必要なのは、「今の自分がどこに立っているのか」を丁寧に捉え直すことです。
ここで活用したいのが、「Will・Can・Must」という3つの視点です。
これはもともとキャリアデザインのフレームワークとして知られており、自分の立ち位置や選択肢を整理するうえで、非常に実用的な視点です。
それぞれの内容を、順に見ていきましょう。
自分は何を望んでいるのか(Will)
「Will」は、自分の意志や価値観に関する視点です。
「どんな働き方をしたいのか」「これから何を大切にしていきたいのか」といった、未来に向かう方向性を探るための問いとも言えます。
たとえば、
- 成長実感を持ちながら働きたい
- 家族との時間を確保したい
- 意義ある仕事に関わりたい
といった願いは、表面には出にくいものの、日々のモチベーションを大きく左右します。
ここが見えていないと、たとえ条件の良い職場に移ったとしても、どこかで違和感を抱え続ける可能性があります。
転職の選択肢を考える前に、「Will」を通じて、自分にとって働くとは何か、何を大切にしたいのかを確認することが、迷いを減らす第一歩となります。
自分にできることは何か(Can)
「Can」は、自分が持っているスキルや経験、強みに関する視点です。
これまでの仕事で培った専門性や知識だけでなく、周囲から信頼されていること、無意識にできていることも含まれます。
ここでのポイントは、「できるかどうか」を他人と比較するのではなく、過去の自分と照らし合わせて捉えることです。
たとえば、
- 数字管理や報告業務を任されてきた
- 人の相談に乗るのが得意で、信頼されてきた
- 新しいことにも柔軟に対応してきた
といった経験の積み重ねは、自分にとっては当たり前でも、他の人にはない強みであることが多くあります。
「Can」を見直すことで、自分がすでに持っているリソースに気づき、自信を取り戻す助けになります。
周囲から求められていることは何か(Must)
「Must」は、組織やチーム、あるいは社会から期待されている役割や責任を指します。
業務上の目標やノルマのようなものだけでなく、「この人なら任せられる」と思われていることも含まれます。
たとえば、
- 若手の育成を期待されている
- 部門間の調整役を担っている
- プロジェクトの中核として動いている
といった立場にある場合、自分が気づかないうちに、多くの「Must」を抱えていることもあります。
一方で、「Must」に縛られすぎると、自分の「Will」とのズレが広がり、無理をして働くことにもつながります。
そのため、「Must」を認識することは、単なる責任の確認ではなく、自分の負荷やギャップを見つめ直す大切な機会にもなります。
Will・Can・Mustの3つの視点から、今の立ち位置を整理することで、転職という選択肢だけにとらわれない「納得感のあるキャリアの動き方」が見えてくることがあります。
けれど、それでもなお迷いが残るときは、もっと感情に近い部分、つまり「なぜ迷っているのか」を丁寧に見ていく必要があります。
次は、自分の中で揺れている違和感や葛藤に目を向ける視点について考えてみましょう。
迷いの正体に向き合う
Will・Can・Mustといったフレームで自分の立ち位置を整理しても、それでもなお「決めきれない」「踏み出せない」と感じることがあります。
それは、論理や条件では解き明かせない、もっと感情に近い「引っかかり」が残っているからかもしれません。
たとえば──
- 仕事内容には飽きてきているけれど、人間関係が良くて辞めづらい
- 周囲からは評価されているものの、自分では成長実感がなくモヤモヤしている
- 他にやってみたいことがあるが、今の環境を離れることに不安を感じている
- 何か違う気がするが、何がどう違うのか言語化できない
こうした気持ちは、明確な言葉にならないまま、ふとしたときに湧き上がってくるものです。
条件面や将来性といった「表に出しやすい論点」と違い、感情の揺らぎや違和感は、他人に説明しづらく、自分でも整理しきれないことが多くあります。
ですが、こうした「迷い」は決して後ろ向きなものではありません。
むしろ、自分の価値観や本音に正直であろうとする姿勢の表れでもあります。
たとえ言葉にならなくても、違和感を感じ取れているということは、それだけ自分の軸を大切にしようとしている証拠です。
迷いを「解決すべき問題」として急いで結論を出すのではなく、まずは落ち着いて整理することが大切です。
思考を整理する方法としては、たとえば以下のような方法があります。
- 迷っている気持ちを、誰にも見せない前提で書き出してみる
- 信頼できる人に「整理できていないんだけど…」と前置きして話してみる
- 過去に同じように迷ったとき、どう乗り越えたかを振り返ってみる
こうした過程を通して、漠然とした感情に少しずつ輪郭が出てきます。
そしてそれは、「今、なぜ立ち止まっているのか」という問いに対する、自分なりの答えをつかむヒントになります。
次は、そうして浮かび上がった違和感や迷いをどのように選択や行動へつなげていくかを考えていきます。
迷いを言葉に変えたら、選択が見えてくる
違和感や迷いを抱えたままでは、前に進むのが難しくなることがあります。
でも、それを無理に振り切ろうとするよりも、**「なぜそう感じたのか」**に目を向けてみるほうが、結果的に納得感のある選択につながることがあります。
たとえば、こんなふうに自分に問いかけてみてください。
- あのとき、なぜ気持ちがざわついたのか
- モヤモヤしていたのは、何が原因だったのか
- 「このままでいいのか」と思った背景に、どんな出来事があったのか
言葉にしてみると、思っていたよりもシンプルな気づきが隠れていたことに気づくかもしれません。
逆に、複雑だと思っていた感情が、ただ「休みが足りていない」とか、「誰かの期待を気にしすぎていた」だけだったと分かることもあります。
ここで大切なのは、何かを決める前に、自分の感情を一度整理してみることです。
迷いがすべて消えることはないかもしれませんが、「何が引っかかっていたのか」が少しでも見えてくると、それだけで選択肢の見え方が変わってくるものです。
そして、そうして言葉にした気づきは、次の行動を考えるうえでの土台になります。
小さな気づきを行動に変えるためのステップ
違和感や迷いを言葉にできたとしても、それをすぐに行動に移すのは簡単ではありません。
気持ちが揺れているときは、焦りや不安も強くなりがちです。だからこそ、小さな一歩を積み重ねることが大切です。
1. 気づきを書き出してみる
まずは、頭の中にあるモヤモヤや考えを、できるだけ素直に書き出してみましょう。
文章にしなくても、箇条書きやキーワードだけでも構いません。
書くことで、自分の気持ちや思考が整理され、何が本当に気になっているのかが見えてきます。
2. 信頼できる相手に話す
ひとりで抱え込まず、信頼できる人に気持ちを話してみましょう。
話すことで、自分の考えが整理されるだけでなく、相手の視点や言葉から新しい気づきを得ることもあります。
話す相手は、家族や友人、同僚、あるいはキャリアカウンセラーなどでもかまいません。
3. 過去の経験を振り返る
これまでの人生やキャリアの中で、似たような迷いや不安を感じたことはありませんか?
どんな風に乗り越えたのか、何が助けになったのかを振り返ってみることで、今の自分に必要なことが見えてくるかもしれません。
4. 小さな行動から始める
いきなり大きな変化を求める必要はありません。
まずは、転職情報を集めてみる、興味のあるセミナーに参加してみる、キャリア相談を受けてみるなど、気軽にできることから始めてみましょう。
小さな行動の積み重ねが、自信と納得感を育てていきます。
違和感を大切にしながら、自分のペースで行動を進めることが、迷いを乗り越えるための確かな方法です。
焦らず、丁寧に、少しずつ進んでいきましょう。
まとめ|納得感ある選択に向けて
転職やキャリアの選択は、簡単に答えが出るものではありません。
迷いや違和感を感じることは、あなたが真剣に自分の人生と向き合っている証拠でもあります。
大切なのは、焦らず自分のペースでじっくりと向き合い続けることです。
小さな気づきを大切に積み重ねることで、納得できる選択に少しずつ近づいていけるでしょう。
まずは、気になっていることを書き出してみることや、信頼できる人に話を聞いてもらうことなど、できることから始めてみてください。
その積み重ねが、あなたの未来をつくる一歩となります。
著者プロフィール

シミズヒサノリ|Trigger Log運営メンバー
広告会社でマネジメント業務に従事している40代。
30代前半のころから副業を始め、ブログ運用、広告運用、業務委託など複数の副業を経験。
現在の副業歴は約10年。
Web制作会社での勤務経験もあり、UX(ユーザー体験)を意識した情報設計・コンテンツ発信に取り組んでいる。
自分の経験が、誰かの「最初の一歩」の後押しになればうれしいです。