働き方について考えるとき、「これが正解」というものが見えにくい時代になりました。
副業、転職、独立——選択肢は広がっているはずなのに、どこか不安や迷いが残る。
そんなときに一度立ち止まって見つめたいのが、“自分の中にある軸”です。
その軸を知るヒントになるのが、キャリアアンカーという考え方です。
これは「どんな働き方を選ぶと、自分は納得感を持って進めるか?」を掘り下げるフレームで、
自分の価値観や優先したいことを、8つのタイプに分類して見ていきます。
本記事では、簡単な診断を通じて、あなたにとってのキャリアアンカーを探るお手伝いをします。
自分の思考の癖や、これまでの選択の背景が少しずつ言語化されていく感覚が得られるかもしれません。
※キャリアアンカーの定義や8タイプの詳しい解説については、こちらにまとめています。
キャリアアンカーとは?
キャリアアンカーとは、自分が働く上で「これだけは大切にしたい」と思う価値観や動機のことです。
どんな職場にいるか、どんな肩書きを持つかよりも、「自分にとって何が満たされると納得感があるか?」に注目します。
この考え方は、アメリカの心理学者エドガー・シャイン博士によって提唱されました。
人のキャリアに影響を与える価値観を8つのタイプに分類するもので、自分の思考や選択の傾向を整理するヒントになります。
すべてのタイプに優劣はなく、正解もありません。
自分自身の「軸」を言語化し、納得感のあるキャリアを築いていくための枠組みとして活用されます。
より詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
ここからは、8つのタイプそれぞれに対応した簡単な質問を通じて、
あなた自身がどの価値観を大切にしているのかを探っていきます。
深く考えすぎず、直感で「近い」と感じる選択肢を選んでみてください。
どのタイプに当てはまるかを判断する手がかりになるはずです。
キャリアアンカー診断|8つの質問から自分の傾向を探る
次の8問は、それぞれ異なる価値観(キャリアアンカー)に対応しています。
それぞれの問いに対して、最も自分に近いと感じる選択肢を一つ選んでください。
あとで集計して、どのタイプが多かったかを見ていきましょう。
キャリアアンカー診断
次の設問に直感で答えてみてください。
診断結果
あなたのキャリアアンカーはどのタイプ?
ここでは、診断結果に対応する8つのタイプをご紹介します。
該当するものが1つだけとは限りません。どれが「自分らしい」と感じるかを基準に、読み比べてみてください。
専門・職能型
特定の分野においてスキルを磨き、専門性を活かして貢献することにやりがいを感じるタイプです。
変化よりも深さを重視し、信頼や実績を積み重ねながら、自分の技術や知識で評価されたいという想いが強い傾向があります。
経営・管理型
組織やチームを束ね、全体最適を考えながら成果を出していくことに価値を感じるタイプです。
リーダーシップや統率力を活かせる環境で力を発揮し、責任のあるポジションを好む傾向があります。
自律・独立型
自分の裁量で物事を進められる自由な働き方を好むタイプです。
誰かに管理されるのではなく、自分のやり方で結果を出したいという意識が強く、組織よりも個のスタンスを大切にします。
安定・保障型
雇用の安定性や生活の見通しが立つことを重視するタイプです。
環境が大きく変わらないことに安心感を覚え、長く落ち着いて働ける職場や制度面の充実を大切にする傾向があります。
起業家的創造性型
新しいアイデアを形にし、ゼロから何かを生み出すことに魅力を感じるタイプです。
「こういうものがあったらいいのに」を実現したい想いが強く、仕組みやビジネスを立ち上げることにワクワクする傾向があります。
奉仕・社会貢献型
人や社会の役に立つことに働く意味を見出すタイプです。
自分の行動が誰かを助けたり、支えたりすることにつながっていると実感できる環境で、最も力を発揮します。
純粋な挑戦型
難しい課題や高い目標に挑戦することにモチベーションを感じるタイプです。
達成感や成長実感を求め、変化のある環境やプレッシャーのある場面でも前向きに取り組める傾向があります。
生活様式型
仕事と生活のバランスを大切にしたいと考えるタイプです。
働き方そのものよりも、どんな暮らし方ができるかを重視し、無理なく長く続けられる働き方を望む傾向があります。
キャリアアンカー診断をどう活かす?これからに向けた3つの視点
診断を終えて、自分の傾向が「見えた気がする」方もいれば、
「どれも当てはまるようで、どれでもない気がする」と感じた方もいるかもしれません。
大切なのは、診断結果に自分を当てはめることではなく、
選んだ選択肢に自分自身の感覚や経験が反映されているかどうかを、静かに確かめてみることです。
ここでは、その結果をこれからのキャリアにどう結びつけていくか、3つの視点を共有します。
1. 「なぜそれを選んだのか?」と自分に問い直す
診断の選択肢は、どれも“自分らしい選択”の断片です。
なぜその場面で「それが大事だ」と感じたのかを振り返ってみると、
過去の体験や、見過ごしていた価値観が浮かび上がることがあります。
診断そのものよりも、選んだ理由を掘り下げることに意味があると捉えてみてください。
2. 理想と現実のあいだにある「揺れ」を言語化する
「自分はこうありたい」と思う姿と、
「今、置かれている環境や立場」のあいだにズレがあるとき、
無理にどちらかに寄せようとすると、かえって納得感を失うことがあります。
そのズレを否定せず、「今はこう、でも本当はこうありたい」という2つの視点を持つことで、
キャリアの選択肢は広がっていきます。
3. 自分の“軸”を、日々の小さな選択に反映させる
今すぐ転職や独立をする必要はありません。
むしろ大切なのは、日常の中に「自分が大切にしたい感覚」を少しずつ組み込んでいくことです。
たとえば「裁量を持ちたい」と感じているなら、
与えられた仕事の中でも“自分なりに決められる要素”に目を向けてみる。
「人の役に立ちたい」と思うなら、周囲への声かけやサポートの仕方を変えてみる。
キャリアアンカーは、未来の選択肢だけでなく、“今の行動”にも静かに作用する指針になり得ます。
自分の「軸」は、これからも育てていける
キャリアアンカーは、診断して終わりのものではありません。
むしろ、これからの経験や選択の中で少しずつ輪郭が変わっていくこともある、そんな“流動的な指針”とも言えます。
今の自分にとって「これが大事だ」と感じるもの。
それを一度、言葉にしてみる。
そして日々の選択に、ほんの少しだけ意識して取り入れてみる。
それだけでも、自分らしい働き方への視界は開けていくはずです。
診断の結果にとらわれすぎず、「何に共鳴したか」を大切にしながら、
これからのキャリアをじっくり育てていく——。
その一歩になれば幸いです。
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